特別協力/田中泯[1945-]
1966年クラシックバレエとアメリカンモダンダンスを10年間学び、74年より「ハイパーダンス」と称した新たなスタイルを展開。当時の現代美術、文化界に先駆的な衝撃を与える。78年パリ秋芸術祭に参加、ルーブル装飾美術館で海外デビュー。既存のジャンルを超えた前衛的パフォーマンスは海外でも高い評価を得る。85年からは山村へ移り住み、農業を礎とした舞踊活動を継続。「踊りの起源」への探求、“日常に存在するあらゆる場”を即興で踊る「場踊り」は、日本および世界各地で現在も繰り広げられ、その公演は3000回を超える。
02年映画『たそがれ清兵衛』(監督:山田洋次)でスクリーンデビュー、第26回日本アカデミー賞新人俳優賞、最優秀助演男優賞を受賞。その後国内外に関わらず多数出演。22年1月、田中泯ドキュメンタリー映画「名付けようのない踊り」(監督:犬童一心)が全国各地で公開中。8月16日からは配信も開始。
著書『僕はずっと裸だった』(2011年)、松岡正剛 共著『意身伝心』(2013年)、写真集「岡田正人『海やまのあひだ』(2007年)」、写真集「平間至『Last Movement 最終の身振りへ向けて[Ⅰ][Ⅱ]』(2013年)』、写真集「『光合成MIN by KEIICHI TAHARA』(2016年)」。
ゲストキュレーター/名和晃平[1975-]
彫刻家/Sandwich Inc.代表/京都芸術大学教授。1975年生まれ。京都を拠点に活動。2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程彫刻専攻修了。2009年「Sandwich」を創設。感覚に接続するインターフェイスとして、彫刻の「表皮」に着目し、セル(細胞・粒)という概念を機軸として、2002年に情報化時代を象徴する「PixCell」を発表。生命と宇宙、感性とテクノロジーの関係をテーマに、重力で描くペインティング「Direction」やシリコーンオイルが空間に降り注ぐ「Force」、液面に現れる泡とグリッドの「Biomatrix」、そして泡そのものが巨大なボリュームに成長する「Foam」など、彫刻の定義を柔軟に解釈し、鑑賞者に素材の物性がひらかれてくるような知覚体験を生み出してきた。
アートパビリオン「洸庭」など、建築のプロジェクトも手がける。2015年以降、ベルギーの振付家/ダンサーのダミアン・ジャレとの協働によるパフォーマンス作品「VESSEL」を国内外で公演中。近年の主な展覧会に、「Throne」(ルーヴル美術館 ピラミッド内、2018)、「TORNSCAPE」(スカイザバスハウス、2021)、「生成する表皮」(十和田市現代美術館、2022)、「Aether」(Pace Gallery New York、2022)
などがある。
榎倉康二[1942-1995]
1942年東京生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻を修了。1970年に弱冠27歳で中原佑介がコミッショナーを務めた「第10回日本国際美術展<人間と物質>」にリチャード・セラ、クリスト、高松次郎らと共に出品。翌年、第7回パリ青年ビエンナーレで優秀賞(留学賞)を受賞。1年間のパリ滞在を経て、アーヘン美術館や国立国際美術館で個展開催、国際的に高い評価を得る。1979年、1980年に続けて「ヴェネチア・ビエンナーレ」に出品。1995年急逝(享年52歳)。壁に廃油を染み込ませたり、廃油・アクリル塗料をつけた木材を綿布に押し当てた滲みを利用するなど、独特の技法により、物と物との関係や物と身体との関係から生じる物質性に着目し、「絵画」からの逸脱を試みた。インスタレーション、絵画、写真など多様なメディアを用いた作品は、今も世界的に高い関心を集めている。
遠藤利克[1950-]
1950年岐阜県生まれ。飛騨高山の宮大工の家に生まれ、少年時代に地元の仏師(ぶっし) に弟子入りし一刀彫りの技術を身につけるが、その伝統的な手わざに縛られ表現の可能性が狭まることをおそれ、立体作品の純粋な表現方法に移行した。「人間と物質展」(1970)に触発され、原初的な物質、地・水・火・風 のイメージの虚構性や幻想性に目を向けたという。1970 年代より焼成した木、水、土、金属などを用い、〈円環〉、〈空洞性〉等を造形の核とし作品を発表。物質感を前面に押し出そうとしながらも、物質の背後にある身体感覚や物語性を追求する方向へと向う。「ヴェネチア・ビエンナーレ」、「ドクメンタ」などの国際的な舞台で活躍。美術の根元に肉迫する思想的スケールの大きさを感じさせる作品は、国内外で高く評価されている。
剣持和夫[1951-]
1951年神奈川県小田原市生まれ。日本大学芸術学部美術学科油絵卒業。1970年代にコンセプチュアルなインスタレーション作品を精力的に発表。80年代から90年代にかけて、サイトスペシフィックな大型のインスタレーションを展開する。同時に日本現代美術を紹介する海外展「プライマル スピリット 今日の造形精神」(アメリカ、カナダ巡回)、「80年代日本現代美術展」(ドイツ、オーストリア巡回)、「メトロポリス」(ベルリン)等に参加。第5回朝倉文夫賞(1992年)、大阪トリエンナーレ(絵画)大賞(1996年)等を受賞。記憶を喚起する始原的な強い造形は、場に立った時の濃密な作品との時間を体験させ、近年はより自然に近づき大地の声を可視化した作品を発表している。
高山登[1944-]
1944年東京生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修士課程修了。1990-91年、文部科学省在外研究員として、ニューヨークのP.S1で制作を行う。「枕木」や鉄、ワックスなど物質感の強い素材によって、特定の場所を緊密な空間に変容させるインスタレーション作品を制作。展示空間や周囲の環境を深く考察したうえで行われるその造形は、1960年代末から今日まで一貫してゆるぎがない。宮城教育大学、東京藝術大学で長く教鞭をとる一方、地域に根ざした野外展の企画や参加を含む多彩な発表活動を通じて東北地方の美術を活性化させ、多くの後進を指導し、国内外の展覧会で作品を発表してきた高山の活動歴は膨大なものになる。近年の主な展覧会に、2017年「ジャパノラマ:1970年以降の日本のアート」(ポンピドー・センター・メッス)、2018年「高山登展」(KGCギャラリー(ロサンゼルス))などがある。
原口典之[1946-2020]
1946年神奈川県横須賀市生まれ。日本大学美術学部美術学科卒業。60年代後半から美術家としての活動を始め、1977年、ドイツ・カッセルの「ドクメンタ6」に初めて日本人作家として選ばれ、廃油を満たした巨大な鉄のプール「オイルプール」を発表し欧米中心の美術界に衝撃を与える。「第10回パリ青年ビエンナーレ」に参加。1978年デュッセルドルフのGalerie Alfred Schmelaで海外での初個展はじめ、2001年、ミュンヘンのレンバッハハウス、2007年ハンブルグのクンストハーレにおけるマレーヴィッチへのオマージュ展など、大規模な個展で海外での評価が高い。2009年に横浜のBankART1929のStudio NYKで大規模な回顧展「Noriyuki Haraguchi:Society and Matter(原口典之 社会と物質)」を開催。2020年逝去(享年74歳)。
藤崎了一[1975-]
1975年大阪府生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了。商業造形、塗装、解体現場、現代美術作家の工房などに携わる。2015年から本格的に作家活動を始める。培った経験や技術、気づきをもとに、彫刻の作り方、原則を根本から問い直し発泡スチロールからランダムに切り出した形状をそのまま作品とする彫刻「Meltism」や高圧洗浄機で粘土を造形した彫刻「Tellus」、写真作品「colorerd oil」、映像作品「Metaball」「Crash」などを発表。自らの身体感覚を起点に、素材の物性を観察し、断片的な動きが連続することにより誘発される造形の力強さを追求する。主な展覧会に「Sculptural Field」MARUEIDO JAPAN(2022)、「コントロールX:切り取りの制御」ソノアイダ#有楽町(2022) 、第47回歩会彫刻展」千葉県立美術館(2022)、「素材ーその形と心」新宿伊勢丹 (2022)
藤元明[1975-]
1975 年東京生まれ。東京藝術大学デザイン科卒業。1999年FABRICA(イタリア)に在籍後、東京藝術大学大学院修了。同大学先端芸術表現科助手を経て、アーティストとして環境や社会で起こる制御出来ない現象をモチーフに、社会へと問いかける展示やプロジェクトを立案・実施。様々なマテリアルやメディアを組み合わせ作品化している。主なプロジェクトに『ソノ アイダ』、『海のバベル』、『FUTURE MEMORY』、『2021』、『NEW RECYCLE®︎』