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【市原湖畔美術館開館10周年記念】アーティストメッセージー10周年によせて

レポート2023.07.15
10年という歳月の中で、当館はお客様や地域の方々などさまざまな人たちに支えられてきました。特にこれまで感動と驚きを届ける展覧会を開催できたのは、アーティストの方々の情熱や想いがあったからです。今回10周年を迎えたことを記念して、当館と関係が深いアーティストの方々から市原湖畔美術館での思い出を綴っていただきました。こちらの特設ページ限定で随時公開させていただきます。※順不同

カワグチテイ建築計画

2010年に行われた設計プロポーザルコンペで、私たちを設計者に選んでいただきました。初めて訪れた改修前の建物は、曲線の壁が連続する複雑な迷路のような何とも不思議な空間でした。ボードの壁で隠されていたところも全部剥がして、遺跡のように裸の空間にして、そこにアーティストが作品を創ったら、と想像しました。開館してから10年、いつもアーティストが空間を新たに生まれ変わらせることを見るのが設計者として最高の喜びです。 
川口有子


開館10周年、おめでとうございます!
市原湖畔美術館は、リノベーション(改修)によって生まれ変わった美術館です。
そしてこの美術館は、展示替えやワークショップのたびに、僕たち設計者の想像を超えて、
リノベーションされ続けているように思えます。
設計や工事は難産でしたが、こんなにも生き生きと、楽しく活動する美術館の誕生に関わ
れたことは、いつまでも、僕の自慢です。
鄭仁愉

色部義昭さん

今から約11年ほど前、ネーミングの選定とロゴの提案から始まった市原湖畔美術館のデザインプロジェクト。4案提案したロゴ案の中で、当時市長だった佐久間さんが選んだのが今のデザインです。実は僕の中で一推しの案ではなかったのですが、サイン計画やグッズへの展開など検討を進めていく中でデザインがうまくかみ合いだしていきました。自分の一推しではなくこの案が選ばれてつくづく良かったなと今では思っています。壁面に大きく展開した立体的なサインは、中房総にまつわる詩や俳句をロゴのシルエットにそって文字を配したもので、北川フラムさんのアイデアから発展して出来たデザインです。ステンレス板を四角い穴でパンチングを施し文字を記す難易度の高い造作は、長島製作所の長島さんの協力によって実現しました。全体のサイン計画では、グラフィックを積極的に使って一緒に空間作りをして欲しいと建築家の川口さんと鄭さんからのリクエストを受けて、ピクセル状のグラフィックを壁に直接シルク印刷するという大胆なアイデアに至りました。曲面で凹凸のある壁面に直接印刷をするという難易度の高い施工については、サイン製作会社エムズの町田さんが探してきた熟練のシルク印刷技師がいたからこそ実現できたものです。
市原湖畔美術館のデザインは国内外でさまざまなデザイン賞を受賞するなど、大きな評価を得られた印象深いプロジェクトとなりましたが、このように人との交感によってユニークなデザインを生み出せた経験こそが、自分にとって最大の財産だと思っています。
アートディレクター/グラフィックデザイナー 色部義昭

KOSUGE1-16さん

毎日マジメに働いてるトイソルジャーは時々膝痛を発症しますが小さな友達もできた様だし、ハイホーもなんだか10年前より優しくなった気がします。5年前に会場構成した子ども絵画展では、菊間小学校1年生(当時)中川琥央くんの衝撃的な作品「ハンバーグにはさまれたオレ」(Toy Soldier賞)に出会えました。
あらためて美術館て面白いですね!10周年おめでとうございます。

木村崇人さん

開館10周年おめでとうございます。同じく10歳となった作品「星ぶどう」が、今も可能性を広げながら、取り組めている事に心から感謝します。植物を扱う作品ゆえに大変な管理に加え、人を巻き込み成長を願う作家の想いも受入れてもらっています。私にとって市原湖畔美術館は、新たな試みの発表の場であり挑戦と実験の場でもあります。地域に根付き、色あせず刺激的な場であることは嬉しく、これからも共に成長したいと思っています。

EAT&ART TAROさん

初めて市原に行ったのは2011年。これまで色々と市原でやらせてもらってます。そんな僕には美術館で展示をする時も、周りで活動するときも拠点というイメージがあって、車で美術館に向かうとき、いくつか道はあるのだけれど旅館加茂城のところを抜ける道が大好きです。小さな踏切をぬけて急に曲がる上り坂。あの小さな山を抜けると一気に視界がひらけてきて、空が広いなぁと思いながら橋を渡るのが気持ちいい。空を見上げたくなる美術館です。

開発好明さん

オープン10周年おめでとうございます。僕が個展をさせて頂いてのは2016年ですが、大規模な個展は初めてだったのでパフォーマンスを含め、連日会場で何かが生まれるドキドキを味わえました。
これから50年、100年と続いて行くと思いますが、自由で開放的な魅力をこれからも発信し続けて下さい。

ひびのこづえさん

湖畔美術館で開いた60(rokujyuu)という人生の区切りの個展は、美術館の中に展示する服を着て、人が踊るのをリアルにみせた。白いホワイトキューブの一角に自然光が降り注ぎ、その舞台に手が届くほど近いところにいる観客は、目の前で起こるリアルな服と身体のコラボレーションを、食い入る様に目撃した。それは光のなかにとける様に神々しく思えて。その余韻のまま表に出ると、緑の芝生とその先の湖面と今踊っていた人類の姿がオーバラップした。
ひびのこづえ

SIDE COREさん

湖畔美術館で展覧会「そとのあそび」がオープンしたのは2018年の8月で、ストリートカルチャーをテーマとしていたことから野外作品も多く、制作中、日に日にアーティスト達が真っ黒になっていったのを覚えています。展覧会では備品倉庫からクーラーの換気口まで美術館のデッドスペースを展示空間として利用し、展覧会を作ること自体が美術館で遊ぶ体験でした。久々に訪れてみても「この空間はこういう風に使えるな、、、」と、展覧会の続きを想像しています。美術館、外の環境、そもそも市原市全体が面白い場所なので、今後どんな発見が生まれるか楽しみにしています。
松下徹

成田久さん

生まれてから最初に何色を握ったのかはわからない。人生の色は自分なりにちょっとづつ塗ってきた。もちろん今も。虹色のとして美術館でお仕事するのは1つの夢であった。もちろん黒く死ぬまでには個展がしたい❤︎したい❤︎︎したい❤︎︎したい❤︎︎したい❤︎︎したい❤︎死たい❤︎
そんな夢見るRAINBOW BOYの僕に第8、9回のこども絵画展を丸っとディレクションして
いただきたいとお話がヤ!ヤ!ヤ!とやってきた。
もちろん主役はKIDS! キラキラWORLD展覧会にするぞ!と愛と魂をたらふく込めて❤︎❤︎❤︎︎❤︎❤︎︎
あんなクリエイションは僕にとってご馳走である。なんでもかんでも料理して食べた。
彼らがこれからどんなRAINBOWを渡って生くのか楽しみであるん。
                            Thank you so much! See you.

ニブロールさん

10周年おめでとうございます。行くたびに心落ち着く素敵な美術館です。これまで展示や撮影などもやらせていただきましたが、あの特徴的な空間が作品に思わぬ魅力を与えてくれます。アーティストとしても、お客さんとしても、これからの湖畔美術館の活動を楽しみにしています。

金氏徹平さん

個人的に改めて彫刻というものと向き合うタイミングでの個展を市原湖畔美術館で作ることができたのはとても良い経験でした。
都市と自然もしくは観客との距離感、時間による価値、用途、スケールの変化、など彫刻を考える上で重視していることが美術館の建物そのものに含まれていたので、彫刻を作るのと同じ感覚で展覧会そのものを作ることができました。
煙を炊いたり、噴水を作ったり、暗くしたり、ピカピカさせたり、ここでしかできないことも色々やらせてもらいました。
とても貴重な美術館だと思います。

名和晃平さん

戦後日本美術史の一大事でありながら、これまできちんと語られてこなかった白州フェスティバル。そのアーカイブを、当時直接関わった方々とともに取り組める最後のタイミングで実現できたことは、私と美術館双方にとって、価値のある挑戦だったと感じる。会期中、美術館の湖畔で観た田中泯さんの場踊りを今も思い出す。身体と環境、踊るものと観るものが重なり合って響くエコーは、遠く白州の時空から現在までを確かに繋いでいた。

鴻池朋子さん

ダム湖とは自然の恵みと脅威を人間が大きな谷に仮に貯めておく一時収蔵庫のような場所です。そのような地勢と深く繋がりのあるこちらの美術館で、今年1124人の子どもたちと「人間以外のもの、人間がつくったもの以外のもの」という素晴らしい展覧会を行うことができました。特に地下からの吹き抜けの展示室は湖の底へつながるような独特のオーラが感じられ、子どもたちの絵を一枚一枚貼る度に、そこと何者かが呼応するように展示室が生き生きとしていったことは忘れられません。

小林エリカさん

市原湖畔美術館、開館10周年おめでとうございます。
「更級日記」の舞台でもあるあの地で、日記にまつわる展示をさせていただけたこと、とても嬉しかったです。湖と広がる芝生を前に佇む美術館を訪れるたび、あの日のこと、ここと繋がる過去や未来に、思いを馳せることができる幸福を噛み締めます。
小林エリカ(作家)

原倫太郎さん・原游さん

市原湖畔美術館との関わりは、子ども絵画展の会場構成でした。会場構成自体初めての経験でしたが、美術館の空間を「動き」、「音」、「影」、「遊び」とテーマでわけ、美術館全体を絵画のプレイグラウンドの様に構成しました。その経験が現在の制作の元になっています。
湖が隣接している世界でも稀有な美術館は、それ自体がサイトスペシフィックであり、訪れるたびに元気をもらっています!
原倫太郎


市原湖畔美術館では、子ども絵画展、アブラカタブラ絵画展、多目的ホールでの個展を行いました。
その名の通り湖に面していて、大きな橋を渡ると美術館が見えてくるという場面が印象的です。
停泊している船も見え、展示を見たこと、美術館の庭を歩いたり、小湊鉄道での往来、
電車待ちのホームの緑のなかに自分が一人たたずんだ様子を上から見たような、
現実から浮遊した時間が、美術館を訪れた体験として残っています。
10周年おめでとうございます。
原游

ジョゼ・デ・ギマランイスさん

市原湖畔美術館では、2018年10月20日から2019年1月14日まで、「ジョゼ・デ・ギマランイス展~アフリカは魅了する」を開催しました。
この展覧会では、私の作品だけでなく、ガボンの伝統的なアフリカンアートも展示したのですが、世界で高く評価されている西洋美術とアフリカ美術の両方を展示することは私にとって重要なことでした。展覧会では絵画、LEDライトのついた箱、タペストリー、オブジェの入った木箱など、様々な形態のアート作品を展示できたことをとても嬉しく思っています。
市原湖畔美術館は建物としても素晴らしく、5年前に私が行ったような多様なパフォーマンスを公開するのにぴったりな場所でした。

1994年から「ファーレ立川」のプロジェクトでお世話になっているアートフロントギャラリーに感謝するとともに、市原湖畔美術館開館10周年を心からお祝い申し上げます。
ジョゼ・デ・ギマランイス

レオニート・チシコフさん

市原湖畔美術館への頌歌

私は様々な国の美術館を知り、見てきましたが、市原湖畔美術館は、10年ほど前、初めて見たその日から私の心を捉えました。居心地よく、親しみやすく、光に満ちた空間。そしてもちろん、素晴らしい展覧会の数々。2019年、市原湖畔美術館で「夢みる力――未来への飛翔 ロシア現代アートの世界」展が鴻野わか菜氏のキュレーションで開かれ、私の作品が展示されました。その時、私は美術館のスタッフや北川フラム館長とも知り合い、かれらに深い親しみを覚えました。台風の後、美術館の仲間たちは、私の作品であるパスタの塔を作るのを手伝ってくださり、失われたユートピアを再生してくれました。

ロシアの宇宙主義者である哲学者ニコライ・フョードロフは、「博物館、その意味と目的」と題されたエッセーで次のように書きました。「博物館は、すべての人々にとって共通の記憶の表現であり、生者にとって大聖堂のようなものである。その記憶は理性、意志、活動と結びついている。それは失われた物についての記憶ではなく、失われた人々についての記憶である。人間はだれもが自分の中に博物館を持っている…… 博物館は時代の希望である。なぜなら博物館の存在は、終わってしまうものなど存在しないことを示しているからである…… 博物館は、人生を奪うのではなく取り戻すという使命を持ち、またそれが可能である究極の機関である。」

市原湖畔美術館もまさにそのような美術館であり、そこでは生きた芸術が息づき、作家たちはくつろぎ、すべてが育っていき、成長し、子供たちの声で満たされ、創造の自由を与え、私たちに希望をもたらします。私の愛するこの美術館が、私の大切な国である日本と私たちの共通の場である地球を彩りつづけますように。そしてそこで働くすべての人々が幸せで、創造的な思いに満たされていますように!
(訳:鴻野わか菜)