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青木野枝 光の柱

2023.10.14.Sat.

- 2024.01.14.Sun.

鉄という素材に魅了され、素材本来の硬質感や重量感、さらには彫刻=塊という概念からも解放された作品を創り続けてきた青木野枝。生命やその働きに関心を持ち、とりわけ生命の源である自然を循環する水の姿を表現してきた青木が、湖畔の美術館を舞台に新たな作品を発表します。水や闇や光、そして匂いの粒子やケミカルな粒子たちが、地からのぼり、上方から降り注ぐ――。当館の9メートルの吹き抜け空間に立ち上る光の柱。有機体のような鉄の作品たちが、美術館を包み込む里山の自然と呼応するような青木野枝の世界が現出します。

写真:本多康司

見どころ

《光の柱 Ⅰ》写真:本多康司

新作「光の柱」が美術館に立ち上がる

この場には、地からのぼっていくものをつくりたいと思った。
上昇する水や闇や光、そして匂いの粒子やケミカルな粒子たち。
それはまた上方から降りそそぐものでもある。
上昇と下降を繰り返す、動体の光の柱をつくりたいと思った。
――青木野枝


本展を構想するにあたり、青木野枝は本美術館で最も特徴的な地下からの高さ 9 メートルの吹き抜け空間に注目。ここに新作《光の柱》を制作するとともに、それを展覧会タイトルとすることを決定しました。
青木は、2011 年以来、《ふりそそぐもの》をシリーズで制作してきましたが、今回、それは地からのぼり、ふりそそぐ、上昇と下降を繰り返す “動体” へと展開されます。「鉄は透明な金属である」「そしていつも内部に透明な光をもっている」と述べているように、青木がつくりだす作品は、私たちが外からは見ることのできない鉄の本質、鉄が内包する光を開示するものです。鉄=光の柱が、湖の底から立ち上がるような空間を、ぜひ体感ください。

展覧会では、他に《 core 》をはじめ大型作品数点を展示いたします。

《光の柱 Ⅱ》写真:本多康司

《光の柱 Ⅰ》のほか、《光の柱 Ⅱ》《光の柱 Ⅲ》の計3点が展示空間に合わせて制作されました。鉄でありながらもどこか柔らかさを感じる作品は、展示室の空気や光が作品の中を行き来し、空間と一体になっていることを感じさせます。

《core-1》《core-3》写真:本多康司

本展では、新作以外に旧作《core-1》《core-3》もご覧になれます。本作品は2022年に開催された「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」(森美術館)でも展示されました。作品に使用されているドイツ製のステンドグラスが、室内の光を取り込んでいるように見えます。

プロフィール

砺波周平

青木野枝[1958-]

1958年東京都生まれ。埼玉県在住。武蔵野美術大学大学院修了。活動当初から鉄板をパーツに溶断し、溶接してつなぎ合わせた彫刻作品を制作。越後妻有・大地の芸術祭、瀬戸内国際芸術祭などの芸術祭では地域の自然や歴史と調和する作品を制作。作品を置く場所や人との交流をライフワークの一つとしている。1997年より版画を継続して出版。毎日芸術賞、中原悌二郎賞受賞、2021年には芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。

青木野枝 オフィシャルサイト

展覧会図録文化人類学者イリナ・グリゴレ(図録寄稿)
学生時代より民俗学に関心を寄せ、アメリカ自然史博物館でイヌイットのつくったものを見たことが創作の大切な核になったという青木が、今回、図録への寄稿を願ったのは文化人類学者イリナ・グリゴレさんです。初のエッセイ集『優しい地獄』(2022)が話題となったグリゴレさんは、社会主義政権下のルーマニアに生まれ、日本に留学、現在は弘前に暮らし獅子舞、女性の身体とジェンダー、移民の研究等を続けておられます。ロシア・東欧圏への関心も深い青木。グリゴレさんはその作品をどのように見るのか。ご期待ください。

【公式図録】
A5変形、48ページ、カラー+モノクロ
デザイン:吉田昌平(白い立体)
執筆:イリナ・グリゴレ(文化人類学者)、前田礼(市原湖畔美術館館長代理)
撮影:本多康司
発行日:2023年12月上旬(予定)

基本情報

開館時間平日/10:00~17:00、土曜・祝前日/9:30~19:00、日曜・祝日/9:30~18:00(最終入館は閉館時間の30分前まで)
休館日毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始[12月29日(金)~1月3日(水)]
料金一般:1,000( 800 )円 / 大高生・65 歳以上:800( 600 )円
*()内は 20 名以上の団体料金。
*中学生以下無料・障がい者手帳をお持ちの方とその介添者( 1 名)は無料
*支払いは現金のみとなります。
主催市原湖畔美術館
協力ANOMALY