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フィリピンからアーティストがやってくる!「ゴミをアートにいきかえらせよう!」アウトリーチレポート

ICHIHARA×ART×CONNECTIONS-交差する世界とわたしレポート2023.09.26
来春開催予定の企画展「ICHIHARA×ART×CONNECTIONS―交差する世界とわたし」の開催に先立って、美術館を飛び出し市原市内でワークショップを実施しました。今回は、フィリピン人のアーティスト リーロイ・ニューによるワークショップの様子をレポートします。

多文化化が進む市原市

市原市には、約6000人の在留外国人が暮らしており、おおよそ50人に1人が海外にルーツを持つ人たちです。私たちが市原のリサーチを進める過程で、日本に渡ってきたきっかけや在住年数、仕事もルーツも様々な人たちに出会いました。市原には、特にフィリピン、朝鮮及び韓国、中国、タイなどのルーツを持つ人が多く、近年ではベトナムからの移住者もみられるようになりました。
日本全体を俯瞰してみても、在留外国人と関わる機会が増え、共に生活を営む関係となってきているのではないでしょうか。私たち美術館では、そのような多様なルーツを持つ人たち(外国人住民)に焦点を当て、彼ら自らの文化やアイデンティティに誇りを持てるような展覧会を開催したいと思います。展覧会には、フィリピン、ベトナム、中国、韓国からアーティストを招へいし、市原に住む外国人住民との関わりながら当館でしか見られない作品を制作してもらいます。

フィリピン人アーティスト リーロイ・ニュー

出展アーティストの一人であるリーロイ・ニューは、市原市内で計2回のワークショップを実施しました。リーロイ・ニューは、フィリピンのミンダナオ島出身、世界で活躍する若手アーティストです。彼は、フィリピンで深刻なゴミ問題に着目し、廃棄物を使った作品を制作しています。今回、市原でのワークショップでも、私たちの身近なゴミであるペットボトルを使って作品をつくりました。2つのワークショップでは共通して、参加者と共に私たちの日常生活で出る空のペットボトルを切って組み合わせた花をつくりました。

日本語教室に通う外国人住民とのワークショップ

初回のワークショップは、市原市内の日本語教室(市原国際交流協会主催)に通っている外国人住民を対象に開催しました。子どもから大人まで、ルーツは中国を中心にフィリピン、ベトナム、ブラジル、コロンビア、バングラデシュ、タイの総勢16名が参加してくれました。ワークショップは英語と中国語、やさしい日本語で進行しました。

まず、リーロイはワークショップのために自分でつくった作品のサンプルや過去の作品の写真を参加者に見せました。「私はペットボトルなどを使って身に着けられる作品をたくさんつくってきました。同時に、プラスチックや竹を使って大きな作品もつくります。人工物と自然の素材を組み合わせた作品です。」また、自身のルーツについて「私自身、フィリピン出身ですが祖父は中国にルーツがあり、中国語を少し話せます。」と述べ、ワークショップ中は参加者の中国人と中国語で会話する場面もありました。

いよいよ参加者の作品づくりに入りました。大人は黙々と手を動かしながら、思い思いに色を塗り、花をつくっていきます。子どもたちもボランティアやリーロイの手を借りながら作品づくりに励みました。ワークショップの後に参加者に話を聞くと、笑顔で「楽しかった」という感想が返ってきました。日本語を学び始めたばかりの中国やフィリピンの参加者は、母国語でワークショップに参加することができた特別な機会となりました。

小学生とのワークショップ

2回目のワークショップは、市内の児童クラブで子どもたちを対象に実施しました。1~6年生の57名の子どもたちが放課後集まってくれました。参加者の3分の1ほどが日本以外にも文化的背景を持つ子どもたちです。中には、リーロイと同じフィリピンにルーツを持つ子どもたちもおり、リーロイと英語で会話する様子も伺えました。

リーロイが会場に入った瞬間、「わー!」と子どもたちは歓声を上げ、彼が身に着けているカラフルな作品に興味津々でした。子どもたちはこの日をずっと楽しみにしていたようで、ペットボトルにカラーペンで色を塗ったり、細かく切る作業も集中して取り組んでいました。特に人気だったのがスプレー塗料で色をつける作業。子どもたちが選んだ色をリーロイがスプレーで色付けしていく工程で、子どもたちは自分のお気に入りの色を塗ってもらうために、言葉がわからなくてもリーロイとコミュニケーションを取ろうと、身振り手振りで伝えながら作品づくりを楽しんでいました。出来上がった作品を私たちに誇らしげに見せてくれました。

来春の展示に向けて

今回のワークショップでつくった作品のパーツである花々は、来春開催予定の企画展「ICHIHARA×ART×CONNECTIONS―交差する世界とわたし」展で公開予定です。リーロイの作品の一部に、ワークショップでつくった花々が咲き誇る様子をぜひお楽しみに!

基本情報

ワークショップ開催概要フィリピンからアーティストがやってくる!「ゴミをアートにいきかえらせよう!」
2023年9月10日(日)10時~12時
場所:市原青少年会館
2023年9月11日(月)14時半~16時
場所:市原市内小学校児童クラブ
協力:市原国際交流協会、特定非営利活動法人エンゼルファミリー
後援:市原市教育委員会


企画展「ICHIHARA×ART×CONNECTIONS―交差する世界とわたし」
会期:2024年3月23日(土)~6月中旬予定