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レイクサイドスペシフィック!—夏休みの美術館観察

2024.07.20.Sat.

- 2024.09.23.Mon.

市原湖畔美術館をよ~く観察


東京から車で約1時間の里山にある当館は、人工湖・高滝湖のほとりに開館した観光・文化施設「水と彫刻の丘」をリノベーションし、2013年に誕生した自然豊かな美術館。きらめく湖の3体の彫刻は、いつからここに? 地層のような外壁、緩やかなカーブを描き重なり合うコンクリート壁、行き止まりの道——バブル経済の真っただ中で設計され、バブル崩壊後に竣工した既存建物のあちこちには数々の謎が残されていた。だけどなんだか心地が良いのはなぜだろう。本展では、その謎と戯れながら、5名のアーティストと共に美術館の観察を試みた。そして、建築空間・周辺環境から着想を得た作品や展開方法を「レイクサイドスペシフィック」と名付けてみている。市原湖畔美術館をよ~く観察する、初めての、夏!

出展作家:森洋樹、石田真澄、光岡幸一、トモトシ、BIEN

見どころ

《lake side》2019年 楠、アクリルグアッシュ

➊ 美術館までの風景が彫刻に?

緩やかな弧を描く展示室に添うように建ち並ぶのは、森洋樹による木彫作品です。美術館までの道のりで目にした、山、森、川、湖、ダム、ビル、家などの自然物や人工物をモチーフに、一本の木を彫り出しながら「色」と「線」のみで風景を表現していきます。学部時代は建築を学び、大学院から彫刻専攻に転向した経歴を持つ森の風景の捉え方が色濃く表れた作品群は、私たちがいつも見ているものは何か、考えるきっかけを与えてくれることでしょう。

New content for an exhibition, 2024 Masumi Ishida

❷ 美術館にふりそそぐ光

石田真澄は、時間の経過とともに刻々と変わる美術館や周辺環境の表情を“光を見つける”ことを通して発見していきます。本展のために撮り下ろされた新作のみで構成されるインスタレーションは、作家自身の視点を追体験させるような仕草で、自然光が差し込む展示室、屋上広場、外壁に展示されます。中学生の頃から独学で写真を始め、近年は「GINZA」や「POPEYE」などの雑誌、広告、写真集などで注目を集める石田にとって、美術館での発表は本展が初めての機会となります。

《ここ》2022年 Tomoya Iwata (参考図版)

❸ 美術館に“新たな導線”

光岡幸一は、建物にテープで文字を書く手法を用いて、美術館に“新たな導線”を作り、美術館で過ごす人々の認識や動きを少しずつ変えていきます。文字で表現されるのは「そこらへん」「あっち」「こっち」「あっちかも」など、正確な順路を示す言葉とは対照的な、曖昧なものばかりです。それらは館内外を散策するように設計され、時にその場に佇ませながら、一見何もないように思えた場所での楽しみ方をささやかに教えてくれます。

《停滞のトレーニング》2021年 YAKUSHI Kunihiro (参考図版)

❹ クールな美術館を“ほんわか”させる

本展でトモトシが試みるのは、引越し業者が壁や床に傷がつかないように養生する技術を応用し、美術館建物の鋭角をやわらかく=ほんわかさせていくアクションです。会期中は、他の展示作品と共に、トモトシによる養生が館内各所に現れます。さらに、“ほんわか”させた部分にトモトシが強くぶつかるコミカルな映像作品も展示します。「建築や都市の完璧なデザインはありえない」というトモトシの考えが表れた、会期中のみの刹那的なリノベーションとも言えるでしょう。

作品のためのプランドローイング 2024年 BIEN

❺ リノベーションの痕跡を可視化する

BIENは、約9メートルの吹き抜けに建物の骨組みを現出させ、建物の“形状”や“歴史”の解体/再構築を試みる新作インスタレーションを展開します。かつて、この空間を貫く梁と柱の向こう側は、湖底の世界を表現するための屋外水槽でした。しかし、水中彫刻を設置しようとつくられた水槽は一度も活用されることなく、遺構のように残されていたのです。展示室内に点在するBIENの遊び心ある仕掛けは、リノベーションの痕跡を可視化し、既存の梁と柱をフィクションと現実の境界線に置き換えていきます。

左:「水と彫刻の丘」1995年撮影市原湖畔美術館  右:「市原湖畔美術館」2013年撮影Tadashi Endo

❻ 30年の時を経て明らかになる、美術館の謎

遡ること30年、「水と彫刻の丘」には、とんでもない建築計画が存在していました。地下トンネル、空中デッキ、湖上の回廊……関連展示「学芸員の美術館観察」では、当館の30年余りの資料を掘り起こし明らかにしていくことで時代性を捉え、建築としての当館の魅力に迫ります。また、来館者にも美術館で発見したことを絵やことばで表現していただく「絵日記コーナー」も開設し、美術館を巡りながら、場所を発見していくことの楽しさを共有できる機会をつくります。

プロフィール

森洋樹 Hiroki Mori[彫刻家]

1988年富山県生まれ。2012 年 武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業、2014 年 武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻彫刻コース修了。日常生活で何気なく思い込んでいる「もの」のイメージをリセットし、自分たちが見ているものは何か意識するきっかけとなる木彫作品を制作している。主な個展に、18年「one side」(銀座蔦屋書店 GINZA ATRIUM、東京)、主なグループ展に、23年「出張モノローグス #2」(GASBON METABOLISM、山梨)、同年「proepi to puroepi」(コートギャラリー国立、東京)など。

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石田真澄 Masumi Ishida[写真家]

1998年埼玉県生まれ。雑誌や広告などで活動。17年5月、自身初の個展「GINGER ALE」を開催後、18年2月、初作品集「light years -光年-」をTISSUE PAPERSより刊行。19年8月、2冊目の作品集「everything will flow」、21年、3冊目の作品集「echo」を同社より刊行。主な個展に、17年「GINGER ALE」(gallery ROCKET、東京)、22年「otototoi」(BOOK AND SONS、東京)、主なグループ展に、19年「LOOKING THROUGH THE WINDOW」(GYRE GALLERY、東京)など。

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光岡幸一 Koichi Mitsuoka[美術家]

1990 年愛知県生まれ。武蔵野美術大学建築学科で学んだ後、2016 年に東京藝術大学大学院油画科修了。
「名前は、字がすべて左右対称になる様にと祖父がつけてくれて、読みは母が考えてくれた。(ゆきかずになる可能性もあった。)宇多田ヒカルのPVを作りたいという、ただその一心で美大を目指し、唯一受かった建築科に入学し、いろいろあって今は美術家を名乗っている。矢野顕子が歌うみたいに、ランジャタイが漫才をするみたいに、自分も何かをつくっていきたい。一番最初に縄文土器をつくった人はどんな人だったんだろうか?」

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tomotosi

トモトシ tomotosi[映像作家]

1983年山口県生まれ。国立大学法人豊橋技術科学大学建設工学課程を卒業後10年にわたって建築設計・都市計画に携わる。2014年より展覧会での発表を開始。「人の動きを変容させるアクション」をテーマに、主に映像作品を制作している。2020年より東京でトモ都市美術館を運営し、新しい都市の使い方を提案している。主な展覧会に、19年「あいちトリエンナーレ2019」(豊田市)、同年「有酸素ナンパ」(埼玉県立近代美術館、埼玉)、23年「絶対的遅延計画」(TAV GALLERY、東京)など。

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Kazuki Shibuya

BIEN[美術家]

1993年東京都生まれ。アニメーション表現や文字、記号などに着目し、その形状や意味を解体/再構築する抽象的なドローイングをはじめ、近年では映像、彫刻、インストラクション、インスタレーションなどメディアを横断しながら、事物の表象に問いかける作品を発表。多様なカルチャーの文脈を取り入れたアプローチもまた、BIENの表現の特徴である。主な個展に、21年「DUSKDAWNDUST」(PARCEL, HARUKAITO by island、東京)、23年「PlanetesQue: The Case of B」(PARCEL、東京)、主なグループ展に、18年「理由なき反抗」(ワタリウム美術館、東京)、20年「PARALLEL ARCHEOLOGY」(OIL by 美術手帖ギャラリー、東京)など。

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基本情報

開館時間平日/10:00 〜 17:00 土曜・祝前日/9:30 〜 19:00 日曜・祝日/9:30 〜 18:00
最終入館は閉館時間 30 分前まで
休館日月曜日(祝日の場合は翌平日)
料金一般:1,000( 800 )円 / 大高生・65 歳以上:800( 600 )円
*()内は 20 名以上の団体料金。
*中学生以下無料・障がい者手帳をお持ちの方(または障害者手帳アプリ「ミライロID 」提示)とその介添者(1 名)は無料
*支払いは現金のみとなります。
主催市原湖畔美術館[指定管理者:(株)アートフロントギャラリー]
後援市原市教育委員会

ワークショップ・イベント

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終了左官ワークショップ「壁塗り!」

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