世界の形態が変容する今、金氏徹平が新たに「彫刻」を問う!
身の回りの物を既存の意味や用途から解放し繋げていくコラージュ的手法で、思いもしなかった形象や風景をダイナミックに現出させる金氏徹平。近年は文学、演劇、ますます多様な領域を横断し、さまざまなコラボレーションに取り組んできた金氏が、あらためて “彫刻” に向かいあう「S.F.」シリーズ最新作《S.F.(Something Falling/Floating)》。人工湖のほとりにたたずむバブルの遺産建造物から誕生した美術館を舞台に展開する金氏徹平の “S.F.ワールド” をご堪能ください。
【作家メッセージ】
この展覧会は、僕がこの 5~6 年の間に取り組んできた様々なコラボレーションや、領域の横断、芸術祭などにおけるサイトスペシフィックなプロジェクト、もしくは世界の形態の変容を踏まえて、個人的な営みや空間から始める新たな” 彫刻” についてのインスタレーションになると思います。
“不安もしくは不安定な時代” という言い方がありますが、僕の知っている限りでも歴史的にも、そうでなかった時などないのではないかと思います。その中で、既存の物から意味や価値が無くなっていく過程のあるポイントと、形を持たない物に意味や価値が新しく生じる過程のあるポイントが正反対のベクトルの中で一致する瞬間のようなものを塊にしていくことにリアリティがあると考えています。それは「自然」と「人為」の関係でもあり、目には見えていないものがいつでも漂っていて、あらゆる境界線をくぐり抜けて攪拌させている状態でもあります。例えば、降雪にしても、洪水にしても、ウイルスにしても、その形について考えると、それは人や都市や社会の形をしているのではないでしょうか。
――金氏徹平