この度、市原湖畔美術館は、昨年8月に逝去された田中信太郎さんを偲び、 田中信太郎展「風景は垂直にやってくる」を開催いたします。
わずか19歳での鮮烈なデビューから79歳で亡くなるまでの60年間。田中信太郎のアーティスト人生は、1960 年以降の日本の現代美術史そのもの でした。読売アンデパンダン展で注目を集め、赤瀬川原平、篠原有司男らに よるネオ・ダダイズム・オルガナイザーズに参加。やがて 1968 年に発表し た「点・線・面」のミニマルな表現は、美術界のみならず、倉俣史朗をはじ めとするデザイナー、建築家にも強いインパクトを与えました。そしてパリ・ ビエンナーレ、「人間と物質」展、ヴェネツィア・ビエンナーレ等の国際展で 日本を代表するアーティストとして活躍。しかし、病床に倒れ、数年に及ぶ 闘病生活を経て、新たな表現形式による「風景は垂直にやってくる」をもっ て復活、精力的に制作活動を続けました。また、ブリヂストン本社、ファー レ立川、越後妻有、札幌ドーム等、数多くのコミッションワークも手がけ、 その作品は日常の風景のなかで人々に親しまれました。
本展では、田中の作品を時代の変遷を追って、当時の写真や田中の言葉と ともに紹介。それぞれの時代に田中がどのように考え、制作し、生きたかを 伝えます。また、日立のアトリエの一部も再現。多くの人に愛された田中 の繊細でおおらかな作品と人の魅力と、在野を選び作品を創ることで生き 抜いたひとりのアーティストの歩みを感じ取っていただければ幸いです。