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次回開催

かみがつくる宇宙―ミクロとマクロの往還

2024.10.19.Sat.

- 2025.01.13.Mon.

紙による表現の可能性を探求する3人の女性アーティストたち

最も身近でありながら、無限の造形の可能性をもつ「神」のような素材―――「紙」。
紙はまた、古来、人々がさまざまな思いを託す神が宿る「依り代」でもありました。本展では、従来の紙のイメージをくつがえす独創的な技法を展開し、「折り紙」、「彫刻」、「切り絵」とそれぞれ紙への異なるアプローチを探求する 3 人の女性アーティストの作品世界を展観します。

「ユニット折り」を世界的に広め、「無限折り」をはじめ、従来の折り紙の概念を変え、今まで誰も見たことない世界を切り拓いてきた世界的折り紙作家・布施知子。

何百枚、何千枚という紙を一枚ずつフリーハンドで切り重ね、切り込むことで、紙による彫刻表現の可能性を探求し、インスタレーションとしての展開も精力的に行う安部典子。

圧倒的な超絶技巧と光の陰影によって、手のひらサイズから存在全体をすっぽりと包みこむような大型作品まで自在に変化する作品世界を展開する気鋭の作家・柴田あゆみ。

三者三様、それぞれが創りだすミクロとマクロの宇宙をご堪能ください。

出展作家:布施知子、安部典子、柴田あゆみ

見どころ

参考画像《OROCHI(大蛇)》展示風景、北アルプス国際芸術祭、2021年

命を吹き込まれた折り紙たち

ユニット折り紙のパイオニアとして世界的に知られ、さまざまな技法による「ORIGAMI ART」の道を独自に切り拓いてきた布施知子。本展では《むくむくとねじねじ》と題したインスタレーション作品を制作します。まるで命を持った生き物のように地上から伸びる「むくむく」と、身体を捻じ曲げるように横たわる300本の「ねじねじ」たち。折り紙から生まれる不思議でダイナミックな生命の世界が展開します。

参考画像 ”TIME LAG- Linear-Actions Cutting Project” SCAI THE BATHHOUSEでの個展風景、2011 Mareo Suemasa

紙と光が生み出す大陸

何層にも重なる紙を切り抜くカッティングが縦横に位置し、安部は新作となる《White Night》(白夜)をインスタレーションします。無数の紙が地層のように積み重なりゆるやかな起伏を表現した本作は、まるで宇宙から地球を眺めているようです。作品を照らす明かりは、特殊照明作家・市川平が手掛け、紙がつくりだす宇宙がひろがります。

《いのちの詩》2024

切り絵が織りなす繊細かつ壮大なインスタレーション

柴田あゆみは、当館9メートルの吹き抜けに《いのちの詩》をインスタレーションします。まるで糸で編み込まれたレースのような繊細さを感じさせる切り絵が、光と共に軽やかに天から降り注ぎます。本展では大型作品《あまのいわと》と《羽衣》も展示。切り絵がうみだす神秘的な空間が紙のあらたな側面を映し出します。

プロフィール

布施知子

1951年新潟県長岡市(与板地域)生まれ。長野県大町市在住。
千葉大学園芸学部卒業。
折り紙との出会いは、小学2年生の時に病気で長期入院していた際、父親が折り紙の本を買ってくれたのがきっかけ。薬の包み紙を折ることに熱中したという。
パーツを組み合わせてつくる「ユニット折り」の第一人者であり、「無限折り」「螺旋」「コイル折り」 など独自に開発した折による作品は、世界的に高い評価を受ける。工業製品も手掛け、その作品は数学教育の世界からも注目を集める。著書が多言語に翻訳されるなど、国内外で多方面に活躍する世界的折り紙作家。
主な展覧会に「Unit and Spiral」展(ドイツ、バウハウス、デッサウ、2004)、「Space folds(スペースフォールズ)」展(Schafhof - European Art Forum Upper Bavaria ドイツ、ブライジング、2015)、「ORIGAMI布施知子の世界OROCHI in長岡」(アオーレ長岡、2023)がある。「北アルプス国際芸術祭」(2017、2021)、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」(2022、2024)にも出展。

Mario la Porta

安部典子

1967年埼玉県生まれ、埼玉県深谷市在住。
1990年武蔵野美術大学油絵学科卒業。 2004年から15年間ニューヨークにて活動。1999年より「Linear-Actions」と題した手作業でカットした数千枚の紙を重ね、一枚一枚の紙の高低差を生かして立体的な地層を生み出 し、自然と人間と時間の関わりを具現化する「カッティングプロジェクト」を開始。また 本や新聞といった既存のメディアにカッターの刃を入れ、独特の解釈を交えながら表現し ていく「Book Cuttings」というシリーズで知られる。2017年より教科書やノートブックを 使った「濾過され(ない)内省」という小、中学生とのワークショップを日本、シンガポー ル、中国で実施。以来継続して取り組んでいる。
主な展覧会に「層–Layering Void」(AOA:87ギャラリー、ベルリン、2024)、「In the Room-横顔のエロシェンコ-」(中村屋サロン美術館、2022)、「PAPER:かみと現代美 術」(熊本市現代美術館、2022)、「影と共時性」(MAHO KUBOTA GALLERY、 2020)、吉岡徳仁ディレクション「セカンドネイチャー」(21_21DESIGN SIGHT、2008) などがある。また、主な受賞にAICA—USA(国際美術評論家連盟全米支部)展覧会アワー ド2011(個展「キル-Artist Books 2009−2010」)、日産アートアワード2013(ファイナ リスト)がある。

柴田あゆみ

神奈川県横浜市出身。
2007年、音楽活動を断って渡ったニューヨークで、教会のステンドグラスの美しさに出会い、切り絵を独自に始める。ナショナルアカデミースクールにて版画とミクストメディアを習得。2015年よりパリに移り、パリ市運営のアトリエ59リボリにて2年間の展示と制作活動を行う。パリ滞在中、フランス最大のペーパーアーキテクト会社より後援を受け、4メートル四方の大型作品の展示やフランス老舗ブランド、repetto本店にて特別展示。
主な展示に、ドイツ国際ペーパーアートトリエンナーレ(2018)、世界工芸トリエンナーレ(金沢21世紀美術館、2019)、「切り絵 柴田あゆみの世界 巡るいのちの“Roots”」(富士川・切り絵の森美術館、2020)、「大地のうた」(丸の内KITTE他、2022)、「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展(東京都現代美術館、2023)などがある。
2022年より、継続して森山良子氏コンサートツアーの舞台美術を、制作・監修。

基本情報

開館時間平日/10:00 〜 17:00 土曜・祝前日/9:30 〜 19:00 日曜・祝日/9:30 〜 18:00
最終入館は閉館時間 30 分前まで
休館日月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始(12/29~1/3)
料金一般:1,000( 800 )円 / 大高生・65 歳以上:800( 600 )円
*()内は 20 名以上の団体料金。
*中学生以下無料・障がい者手帳をお持ちの方(または障害者手帳アプリ「ミライロID 」提示)とその介添者(1 名)は無料
*支払いは現金のみとなります。
主催市原湖畔美術館[指定管理者:(株)アートフロントギャラリー]
協力公益財団法人紙の博物館