JP EN

出演:本城直季(中央)、江口宏志(蒸留家、mitosaya代表/右)、 進行:前田礼(市原湖畔美術館 館長代理/左)

本城直季 (un)real utopia オープニング記念トーク

レポート2020.11.25
11月7日(土)に、「本城直季 (un)real utopia」 のオープニングを記念して、本城直季さんと、市原市の隣町、大多喜町でmitosaya薬草園蒸留所を運営されている江口宏志さんをお迎えして、本城さんの写真のこと、市原市がある中房総のことなどを伺いました。トークの一部をご紹介いたします。
前田:本日は、ゲストに江口宏志さんをお招きしております。江口さんはもともと本の世界で活躍をされていた方でUTRECHT(ユトレヒト)という非常に有名なセレクトブックストアを立ち上げられ、その後、Tokyo Art Book Fairを立ち上げられた方です。2015年に突然蒸留家に転身され、市原のお隣の大多喜町にmitosayaという蒸留所を開かれました。そのいきさつは、『ぼくは蒸留家になることにした』に書かれてますので、ぜひお読みいただければと思います。
今回、本城さんにトークショーの対談相手を伺ったところ、江口さんのお名前が挙がりました。わたしたちとしては、mitosayaさんとは何かご一緒できないかなと思っており、素敵な機会と思い、今回、ゲストにお招きしました。
本城さんと江口さんは、実はすごい長いお付き合いで、『small planet』が出版される前からお付き合いということで、出会いからお話を伺っていこうと思います。

お二人の出会い

本城:book246が一番初めの出会いでしょうか?
江口:多分、2004年に僕がお手伝いをしていた青山一丁目にあった本屋さんの一角で、今回が初の大規模個展だとしたら、初の小規模な展示をやった時だったかと思います。その時は、どのような写真を展示したんでしたっけ?
本城:多分、ミニチュア風の初期の写真だったかと思います。
江口:『広告』という雑誌で新幹線の特集があった時に、本城さんの作品が掲載されていて、それを写真としてちゃんと見せようとして展示した展覧会だったかと思います。その時、来る人来る人が「なんだこれ」と驚いていたことを覚えています。
その後に、僕がやっていたUTRECHTという本屋さんが代官山の古いアパートの一室でやっていた時、スウェーデンの鉄道をテーマにしたグッズとかのフェアをやろうとして、ギャラリーとして使っていたお風呂場、1.5m四方の浴槽がそのままあるような部屋に、本城さんのスウェーデンの写真を展示していただきました。
本城:イタリアにカフェの写真を撮りにいったときに、その時のカフェ案内の書籍を出したときの関連で、トークイベントもやっていたかもしれないです。
江口:そうでしたっけ? 20年以上も前からの付き合いがあるので、会ったり会わなかったりという関係です。
本城:でも、江口さんが、僕の中で一番街ですれ違う人なんですよ。

4×5(シノゴ)という事務所

江口:ブックフェアに、本城さんがやられていたシノゴが出店くださったんですよね。シノゴはどのように説明したらいいのでしょうか。
本城:シノゴは写真をやっている同級生であつまっているグループで、4人でシェアをしてやっている事務所です。
江口:それで、Tokyo Art Book Fairに参加していただきました。その時は、それぞれがジンのようなものを作られていましたが、本城さんはどのようなものを作られていましたか。
本城:僕は、その時は、プライベートのスナップのものを作っていたと思います。その時は、牧野という、中年女性を撮っている仲間が応募して参加しました。そういうフェアがあるんだと思って行ったら、江口さんが主催でやられていることを知りました。
江口:シノゴはいい活動ですよね。写真好きが集まってワイワイやっている感じがいいです。お互いに写真を論じ合うとか、批判しあうということもあるのでしょうか。どのような関係性なのでしょうか。
本城:そういう批判しあう関係性ではなく、お互い好きな写真を撮っています。本当にばらばらのテイストでやっていて、この人たち大丈夫かなというので、集まってちゃんと仕事ができるようにと立ち上がった事務所です。

本城さんの写真

small planet 展示風景田村融市郎

江口:僕が本城さんのことを追えていないところがあるので、本城さんの活動を色々と伺っていきたいと思っています。『small planet』が出版されたのが2006年。時系列としては、small planetシリーズがあって、そこからさらにいろんな場所にいかれてるのでしょうか。
本城:そうです。small planetシリーズから派生して、いろいろと撮影しています。
江口:展示室の最初にあるintroductionは、大学生のころに撮影された作品ですよね。
本城:そうです。あれは大学生のころに試行錯誤をしていたころの写真です。
江口:今につながる、こういう写真を撮りたいと思ってやっていたのでしょうか。
本城:学生だったので色々と手法を試してみて。実際に動かしてみてどうやって写るんだろうとやっていました。
江口:今さらあえて聞くのもですが、本城さんの写真の面白さは、カメラによる部分なのでしょうか。それと手法による部分なのでしょうか。それぞれ説明していただけますか。
本城:僕が使っているカメラは、4×5(シノゴ)という大判カメラ、板状のフィルムで、蛇腹がついています。蛇腹の機能でアオリという、傾けることをあおるというのですが、蛇腹だからいいように傾けることができます。それで、ピントが合うところと合わないところができるので、そこを撮影しています。
江口:シノゴならではの撮り方なのですね。カメラは譲ってもらって?それとも、学校から借りてですか?
本城:学校から借りました。写真学科に行ってたのですが、4年生頃から機材を自由に借りることができたので、大判カメラを借りて撮り始めました。
江口:その手法で撮影するのに向いているものと向いていないものとがあるのでしょうか。
本城:基本的には、三脚を立てて撮影をするので、動かないものが向いています。
江口:そうすると、おのずと撮影する対象物が決まってくるということですね。上から撮影した方がいいというのは、やっているうち出てきた考えなのでしょうか。
本城:もともとまちを撮影していて、そのうち、まちを俯瞰して撮影するようになりました。高いところに登って撮影することもよくやっていました。
江口:俯瞰して撮影することで、ミニチュアの世界がカメラの中に見えてきたということでしょうか。
本城:はい。
江口:その同時進行感が、最初にintroductionがあって、見ていくと伝わってくるなと思いました。

kenyaシリーズ

giraffe(kenya)Naoki Honjo

江口:あとは、kenyaというシリーズ。一般的には、もっと人工的なまちの風景とかだと思っていたら、ケニアという大自然の中でもそういうことが起こるという。解説に自然も人の手によって作られたということが書かれていましたが、そこをもう少し聞かせてもらえますか。
本城:ケニアの場合は、人口というか動物が風景を作ってるんだと思いました。まちは人が作っているけれども、サバンナは実は動物が草を食べて環境を作っているということが上から見て分かりました。ヘリコプターから撮影したとき、違和感がある場所が一カ所あって。大きな木の周り芝生だけが青々と残っていて、他はもう枯れている感じの風景。
江口:それはどういうことなのでしょうか。
本城:木の周りは視界が悪いから危険な場所で、草食動物が近寄らず、草を食べないのです。だから、そこだけが青々としていて、なんだろうと目につきました。それで、ヘリコプターのパイロットに聞いたら、そこは危険な場所だから動物は近寄らないんだよと言われたときに、そしたら、それ以外の場所は全部食べてるんだと思って。すごいなと思いました。
ヌーの大移動というのがありますが、サバンナにいる野生動物がタンザニアにかけて大移動するという、草を求めて、食べつくしちゃうから大移動してるということが上から見て分かりました。
江口:自然って、手つかずのところだと思っていましたが、実は、動物たちがつくっているのですね。
僕は今、植物や果物を原料にお酒を造っているのですが、お酒を造るということで、ものの見方が変わってきたと思っています。例えば、あそこにそろそろ実がつくなとか、この花はどんな香りかなとか。今まで自然物をいい感じね、とざっくりとした言葉で表していたことが、木、花、実、根っこなど、どんどん解像度が上がってくるという言い方はちょっと陳腐ですけれども、植物のことが細かく気になってくるようになりました。僕は、お酒を造るという目的や、植物を発酵させて蒸留させてという技術があって、お酒が出来ていくところがありますが、それを本城さんは、シノゴというカメラとアオリという技術で、自然のものを、自分じゃないと見えないような視点で作品にしているというのを、ケニアの写真で感じました。
前田:あれはヘリコプターで撮影されていて、動物が逃げてしまって大変だったとか。
本城:そうですね。ヘリコプターってものすごい音なので、こんな小さい点でしか見えていない時から逃げてしまって。あっ、これ撮れないなって思ったのですが、そこはヘリコプターのパイロットが頑張ってくれて、何とか撮影することができました。
前田:ケニアでは動物を見分けてすごいですよね。
本城:ケニアでは、パイロットが尋常じゃなく目がよくて。僕はなにも見えてないのに、あそこにいるよって。どこどこってやっててしばらくすると見えてくるということがありました。

ヘリコプターでの撮影について

前田:ヘリコプターはいつごろから使われてるのでしょうか。
本城:『small planet』の写真集を制作しているころからです。
「周りに高い建物がないのですが撮影できますか」と聞かれて、「大丈夫です、空撮できます」と言って。今まで空撮したことはなかったのですが・・。それからですね。
江口:ロケハンとかできないですよね。
本城:そうですね。ロケハンはできないですし、ものすごく揺れるんですよ。写したいものにピントが全然合わず、失敗もしながらやってきました。
江口:天気のいい日に撮られた印象なのですが、天気も大事ですか。
本城:天気も大事ですね。離れている分、写りが悪くなってきます。
江口:実際にはどのくらいの高さなんでしょうか。
本城:法律上の規定で建物がある場所では、地上から300mと言われています。
江口:打率としてはどうなんでしょうか。
本城:一番初めは、全く撮れていませんでした。

ものの見え方について

前田:江口さんが、今のお仕事をされるようになってから植物がよく見えるようになってきたと、今までは漠然とした自然というか、ぴたっと見えるようになってきたというお話をされましたけれども、写真もそういうところありますよね。本城さんも目がよくなったというか、色んなものが見えるようになってきたということってありますか。
本城:空撮の作品に関してはそうですね。薄暗い中でとっているので、最初は何も見えないんです。撮ってみて現像してようやくあこういう風に写ってたんだと。あと、反転しているので、普通のカメラと違って、のぞいているとき画面がさかさまに写るのです。なので、自分の中であまりうまく置き換えられなくて、初めの頃は漠然と適当に撮っていることもありました。
前田:そういう目の不思議というのも、今回の展覧会を見てあらためて思ったんですけれども。江口さんのお話で、実がひとつひとつ見えてくるというお話と響きあっているなと思って伺いました。
江口:カメラを持つことで、違うものが見えてくるというのがいいなと思います。

本城さんの作品の見え方

前田:2001年に初めてお会いして、作品を見たときにびっくりされたとお話されていましたが、どのようなところにびっくりされたのでしょうか。
江口:その時は、新幹線の鉄道模型みたいな写真でした。本城さんの写真は、よくある新幹線の写真ではなく、ポップなのです。かわいいと言われることもありますし、新幹線をかわいいと表現されることは、今までなかったと思います。その当時は、全く無機質、人工物に対してかわいいと当てはまるような写真というものが他にはなかったと思います。それを見た人が僕も含めて、一番の驚きだったのだと思います。
前田:市原には小湊鉄道があって、今回も小湊鉄道を撮った作品もあるのですが、それを見ると私はプラレールみたいと思うのですが、20年前は、そういったかわいいという写真はなかったのかもしれないですね。
江口:そういう反応を聞いて、どう思いますか。
本城:自分が学生だったころに撮影をしていたときとは、反応が全く違くて。おばあちゃんや若い子とかも面白いと言ってくれて。でも、その時は、自分では撮っていて全然ピンときていませんでした。ただ、作品を見せたら、人が反応してくれるので、面白いんだなと思っていました。
江口:そういう意味では、本城さんは自分を客観化しているというか、これがいいんだという感じでもないと思います。周りの反応を見て、自分のことを再認識するというか。
本城:あっ、これが面白いんだなって。でも、ちょっと自分が表現したいと思うこととはちょっと違うかなとも思いつつ。
江口:それはどういうところですか。
本城:僕としては、今回の展示みたいに一つのことに絞って、まちについてもっと語れるような写真、表現できるような、ミニチュアとして以外に、もうちょっと深堀していけるといいなというのがずっとあります。その、ミニチュアだけに頼りたくないなというか、その見え方だけに頼った写真家にはなりたくないなというのがずっとあります。

tohoku 311シリーズ

tohoku 311 展示風景田村融市郎

江口:そういう意味では、今回展示されているtohoku 311シリーズは、メッセージというか、本城さんが表現したいことがあるのかなと思いました。
本城:一つのまちの、色んな形があると思うのですが、その形のひとつが展示して見られることはいいことなのかなと思います。いろんな人の心にささるかなと。実際、上から自分が見てみて圧倒されたところもあります。
江口:すごい光景ですよね。
前田:あれは震災のあった3か月後ですよね。今回、東北を撮られているということで、今回、ぜひ展示していただきたいと思いました。ヘリコプターを自分でチャーターされて、それで行かれるということが、私はすごいなと思いました。本城さんは、ほわほわっとした感じがありますが、豪気というか、豪胆なところがおありの方だなと思いました。へリコプターって高いでしょ。
本城:そうですね。その時は色んなところに連絡をして、ヘリコプターを大阪から東北の方まで運んでもらいました。
前田:実際に行かれて、色々な思いがおありだったと思います。私たちもニュース映像で見ていたわけですが、あらためてご自身の目でご覧になって、そして写真を撮ろうと思ったときって、どのような感じだったのでしょうか。
本城:自分の中では3か月間ずっと悶々としていた部分がありました。でも、見てみたいという気持ちが強くなって、その気持ちに逆らわらずに撮るだけ撮ろうと思って行くことにしました。
江口:どこを撮るか、色々と考えますよね。地震の写真も映像もたくさんありましたけど、本城さんのような写真はなかったなと、今見て驚きました。本城さんの個人的な関心みたいなものもあるでしょうけど、社会的意義というものがあるのかなと思いました。

LIGHT HOUSEシリーズ

LIGHT HOUSE 展示風景田村融市郎

前田:今回の展覧会はバラエティに富んでいて、先ほども、ミニチュアの写真だけじゃないということをはっきりとおっしゃられていましたが、第2展示室の真っ暗なあの部屋は、あそこだけ路地に入っていくような雰囲気がありますね。LIGHT HOUSEシリーズにはどのような考えがあるのでしょうか。
本城:実際に自分が住んでいるまちを夜出歩くと、ああいう風に見える瞬間があって。家の窓の明かりとかが映画のセットみたいだなと思うことがよくあって、それを表現できたらいいなと思い撮影した作品です。
江口:そこだけがばっと見えてくる、そういうことですよね。今回、市原でも撮影されたのですよね。
本城:今までは、自分が知っているまちでの撮影が多かったのですが、今回、久しぶりに知らないまちでの撮影で、夜中出歩いて撮影するのは、ちょっと怖かったです。
江口:本城さんも怖いけど、夜中に人の家撮ってるの、変質者みたいですよね。見かけた人も怖いですよね。歩いて歩いて、ここがいいなと、場所を見つけていくのですか。
本城:そうです。
前田:撮影はいつ頃されたのでしょうか。
本城:6月ごろです。
前田:まちを歩いてみて、どのような感じでしたか。
本城:夜中なので変わらないかな。人がいない。

中房総、mitosaya薬草園

田村融市郎

前田:あとは上からも撮られましたが、この写真は湖畔美術館を撮影いただいたものですが、上から市原、中房総をどのようにご覧になりましたか。
本城:色んなまちの景色があると思いました。養老渓谷みたいなところや、自然とうまく交わっている場所が多いなと。湾岸の方は、工業地帯で色々とありますが、少し離れるとまちと風景がうまく交じり合っている場所だなと感じました。
江口:僕もまだこっちにきて4年くらいですが、自然と人の生活が密接にあって、バランスがいいと感じています。30分くらい行けば海があったり、1時間くらい行けば東京に出られたり、なんか、そういうちょうどいい感というのがありますね。
前田:今は農業もされているんですよね。
江口:今、麦を育てたり、果樹を自分たちで植え始めたりとか、そういうところからやっていきたいなと。
本城:前、偶然にすれ違ったときに、「薬草を始めるんだよね」と言っていて。植物が流行っていたから、ガーデニングでも始めるのかなと思ってたら。
江口:たまたまの出会いなのですが、今回、大多喜町の薬草園だった場所を引き継がせてもらって、蒸留所にさせていただきました。
本城:その時蒸留家なんて全然言ってなくて。遊びにくればと社交辞令で言われて、すれ違ったんですけれども。
江口:薬草をやってるんですよね。なかなか公営の薬草園が閉園して、次の使い手を探してることは、なかなかないですよね。よく言う、廃校とかがありますけれども、今まで使われていた公営の場所や建物が役目を終えて使われなくなっているということがすごく多いですよね。それがどう面白く使えるのか考えるのがすごく楽しいし、今回は、僕は蒸留所にしましたが、幼稚園をやるってこともあるかもしれないですし。自然もある、町もある、利便性もあるみたいな場所なので、もっとうまく活用できる方法があるのかなと、色々と考えています。
前田:1万6千平米あるんですよね。
江口:500種類くらいの薬草があるんです。

本城さんが気になる場所

前田:本城さんは上から見ていて、被写体としてだけではなく、ここの場所いいなと思うことはありますか。
本城:ちょっと変わってる場所ですね。
前田:ちょっと変わってる場所とは。
本城:最近、ちょっと変わってるなと思った場所は、大分に撮影に行ったとき。阿蘇山付近の地形って変わってるなと思いました。
江口:本城さんがぐっとくるという景色というのは、どういうものなのでしょうか。
本城:自分の中でちょっとした違和感、ちょっと普通とは違うなという、地形的なものや建物などです。

small gardenシリーズ

small garden 展示風景田村融市郎

江口:人がいて、人の営みが見える、そういうものありそうですね。
本城:そいういうのはあります。
江口:今回の学校のシリーズも、ぐっとくるところがありました。自分はいるはずもないのに、こういうことをしたような気がするみないな。ああいうのも面白いなと。
本城:あれもたまたま都営の団地を登っていて見つけた景色なのです。高いところがあると、自転車やバイクを止めて登っちゃいます。
前田:登れるものなのですか。
本城:海外だと厳しいけど、日本は意外と登れます。で、その時、ちょうど小学校があって、すごい面白いと思って。それから色々な場所で小学校を撮影しています。
江口:どうやって探すのですか。
本城:グーグルマップを使ったり、色々です。
江口:ミニチュアっぽくなることで個人が特定されなくなって、なにか匿名性のある、でも、小学校3.4年生というか特定の人物感が、見る人に俺かもと思わせるのかなと思いました。

treasure boxシリーズ、Las Vegasシリーズ

treasure box 展示風景田村融市郎

前田:被写体がバラエティに富んでいるなと感じました。ラスベガスや宝塚など、もともとフィクショナルな世界をまたさらにフィクショナルとして撮影するって面白いなと思いました。
本城:宝塚は、幻想的な世界で、撮影しててもきらびやかで、圧倒されました。それを俯瞰すると、またよりかわいらしくなって、より幻想的になっている気がします。
ラスベガスも、最初は単純に、ピラミッドやエッフェル塔のミニチュアがホテルとかをミニチュア繋がりで撮影したら面白いかなと思って行きました。そしたら、まち全体が、日本人が考えている規模ではない開発をしていて、同じようなものが延々と続くまちづくりだったので、そっちに魅せられて、ずっとそっちを撮影していました。このカメラマン何を撮っているんだろうと、ヘリコプターの人は思っていたと思います。

※注 市原湖畔美術館会場では、scripted Las Vegasシリーズは展示しておりません。

daily photos

daily photos 展示風景田村融市郎

前田:地下にポラロイドの写真がありますよね。あれは、昔から撮影してるのですか。
本城:あれは、それこそ学生の時から撮影しています。
前田:そのころからミニチュアとかかわいらしいものに関心がおありだったのでしょうか。
本城:そうですかね。かわいいものが目についてたかもしれないですが、作品ではそういうかわいいものにはいきたくないなと思っていました。でも、好きだから目につくと撮っちゃう。その間の葛藤ですかね。

図録

展覧会図録

江口:図録が充実した内容になっていますが、図録について教えていただけますか。
本城:お任せで作っていただいたのですが、判型も面白い形になっています。
江口:この縦長の判型というのは、どういう意図があるのでしょうか。
本城:シノゴの写真の判型を半分にした形になっています。ちょうど開くと、シノゴの形になって、大きく作品を見ることができるように考えてもらっています。
江口:色んな方々に寄稿いただいてますね。ポールスミスさんとか、意外と思いました。
本城:作品をすごく気に入っていただいて、ロンドンでも展覧会をさせていただいたりしました。僕の作品をよく展示してくださっています。

本城さんの写真の面白さ

前田:本で見るのと展覧会で大きい写真を見るのとでは、印象が全然違うなと、改めて思いました。焦点が1か所ではなく複数あり、そこが面白いなと思いました。写真が大きいので対話ができて、写真って楽しいなとシンプルに思いました。
本城:よく見ると、いろんな人がそれぞれいろんなことをしていているので、小さいとそれが一つにまとめられちゃうのですが、大きく引き伸ばすことによって、その中で色々な活動をしている人たちが収められています。フィルムも大きいフィルムを使っているので、それが鮮明に映し出されていると思います。
前田:写真の楽しさと場所の楽しさを感じました。子供たちに見てもらいたいというのがあり、市原市教育委員会に後援をいただきました。自分たちがこういう世界にいるんだなということを、展覧会に来て発見してもらえたらいいなと思います。
本城:当たり前のように過ぎていく自分たちが住んでいる世界に、なかなか疑問を持たないかもしれないのですが、上から見てみるとこういう風になっているんだとかを気づいてもらえたらと思います。僕の場合、結構ぼーっとしてることが多いので、そういうことを考えちゃうんですけど。
江口:写真を前にして、考えるきっかけになるといいですよね。子供たちの反応が楽しみですね。

ワークショップ(11/14開催)

前田:来週ワークショップをやるのですが、あそこにある藤原式用水機から撮影されるんですよね。
本城:そうです。ちょうどいい場所で、いい写真が撮れそうです。
前田:カメラは機械で、コンピューターとは違って、人間の手を使って操作するマニュアルなものだと思います。今回の展覧会は、写真展なのですが、写真展という以上に物質的なものを感じましたね。ボリューム的にもそうですし、ものというものを感じましたね。蛇腹の大きなカメラを使って撮られているものだから、単なる2Dの写真という以上のなにかものがあるのかなと思いました。子どもたちにもその世界に入ってもらえたらと思っています。
江口:腕を組んで難しい話をするのではなく、おしゃべりしながら見るのが合うんじゃないかなと思うんです。
本城:ワークショップもみんなでどこに立つかなどを話し合いながらやっていきたいと思っています。
江口:それは見れるんですか。
本城:インスタントフィルムを使うので、その場で見ることができます。もうちょっと変えてみる?などを話しながら、何回か撮る予定です。
前田:ワークショップは色んなところでやられてるのでしょうか。
本城:展示でそういう機会があるときにはやっています。

おわりに

前田:これは再来年まで、全国5カ所で開催される展覧会です。これから全国を回っていく中で色々な写真を撮っていかれる感じですか。
本城:はい。色々と撮っていきたいと思っています。
前田:巡回先の場所でも、この市原みたいな写真が生まれていくんですよね。
江口:展示がアップデートされていくんですね。
本城:そのつもりでいます。

Related article

Recent Blog

Archives

ICHIHARA×ART×CONNECTIONS-交差する世界とわたしレポート

2023.09.26

フィリピンからアーティストがやってくる!「ゴミをアートにいきかえらせよう!」アウトリーチレポート

来春開催予定の企画展「ICHIHARA×ART×CONNECTIONS…

レポート

2023.08.15

フォーラム「湖の記憶、川の思い出」レポート

8月11日に当館多目的ホールにて、フォーラム「湖の記憶、川の思い出」が…

レポート

2023.07.15

【市原湖畔美術館開館10周年記念】地域へ、世界へ。わたしたちの10年

2023年夏、市原湖畔美術館は開館10周年を迎えました。開館してからこ…

レポート

2023.07.15

【市原湖畔美術館開館10周年記念】アーティストメッセージー10周年によせて

10年という歳月の中で、当館はお客様や地域の方々などさまざまな人たちに…

レポート

2022.12.01

「試展ー白州模写 <アートキャンプ白州>とは何だったのか」 オープニングシンポジウム レポート

「試展ー白州模写 <アートキャンプ白州>とは何だったのか」 の開幕を記…

レポート

2022.06.03

オープニングトーク 金氏徹平×村田沙耶香「変容する世界の中で」

金氏徹平さんと芥川賞作家の村田沙耶香さんをゲストにお招きして、それぞれ…

レポート

2022.01.15

湖の記憶を語る会

高滝湖ができる以前の地域についてーー集落のこと、生業のこと、祭りのこと…